群馬大学GA研究会 なんでもにっき

群馬大学サークル「GA研究会」です。会合記録や イベントレポート、個々人の研究、突発企画なども書いていきます。お楽しみに!

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

"TCG"と呼ばれる玩具をめぐる諸問題

zaitakuなのだわ。
秋の夜長に、調子にのって記事書いちゃったのだわ。


■元記事(某授業で提出した英語レポートの転載)
http://apg.blog3.fc2.com/blog-entry-228.html
なんだけど、突然、全文英語の記事を投下したもんだから荒らしか何かと勘違いされたようで…
ふと思い立ったので再和訳して載っけてみる。


--------------------



I. おもちゃ屋やデパート、ショッピングモールでのある風景

 「お母さん、あのカード買ってよ!」

 あなたがおもちゃ屋やデパート、ショッピングモールに行くと、時折こんな場面に出くわすのではないだろうか。もしくは、直接に経験したことがある人もいるだろう。もしくはカードを買う、買わないといった談義をしている子供たちの姿を見かけたことがあるかもしれない。

 彼らが熱中している玩具は「トレーディングカードゲーム(TCG)」といわれるものである。件の場面に出くわすたび、私はその人気の高さを賞賛したものだ。20世紀末から今日にいたるまで、TCGは子供たちの間で非常にポピュラーな玩具の種類の一つとなっている。言い換えれば、TCGの顧客は子どもが中心ということになろう。

 私もTCG売り場で見る顧客の大半は子供であったと記憶しているのであるが、時折、私は大人がカードを買っている姿を目にしたことがある。彼を見たとき、私はTCGの客層に鑑みて不思議に思ったのだった。なぜ、大人がTCGなど買うのであろうか、と。

 その後、TCGについて調べてみたところ、私はTCGには子供向けだけではない玩具であると考えるようになったのである。


↓Read More

 


 


II. TCGの歴史

 TCGの元祖は1993年にWizards of the Coast社から発売された『マジック・ザ・ギャザリング(MTG)』であるといわれている。このMTG、如何にして生まれたのであろうか。

 MTGの生みの親で、統計学の専門家でもあったのがリチャード・ガーフィールドである。彼は既存の玩具を組み合わせることでTCGを生み出した。というのも、彼がTCGのアイデアを思いついたのは、彼自身の商業的失敗に依拠しているからである。彼は自作のボードゲームを売り込むためウィザーズ社に入社したのだが、残念ながらそれがヒットする事はなかった。この当時、ボードゲームは既に時代遅れの産物と見なされがちだったのである。

 リチャードはボードゲームの欠点を考えた。唯一にして最大の欠点は、一回のゲームに多くの時間がかかる、ということであった。もしもあなたが『モノポリー』や『人生ゲーム』をプレイしたことがあるならば、この欠点は容易に理解できるに違いない。

 一方で、ボードゲームには大きな長所もあった。それは「ロールプレイング」である。ロールプレイングは、ボードゲーム内の「独自の世界観」を楽しむ上で必要不可欠なものである。
プレイ時間を短縮しつつ、ロールプレイング機能を失うことのないゲームを作ることができないか?その答えを、リチャードは「カードゲーム」のゲームシステムに求めたのである。『ポーカー』や『UNO』、『花札』を想像してみて欲しい。ボードゲームにかかる時間よりも、圧倒的に短い時間でゲームを終わらせることができることが分かるだろう。

 つまり、カードゲームは「手軽さ」という長所を持っていたのだ。リチャードは、カードゲームに「ロールプレイング」機能を持たせることによって二つの”ゲーム”を融合することを思いついたのだった。

 ビジネスモデルとしての側面についても考慮された。既存のカードゲームは―54枚のトランプのように―限られた種類のカードの中でプレイするのが当たり前であった。このことは、そのカードゲームが強力なブランドをもっていない限りはロングセラー賞品になりにくい、ということを意味していた。この問題を解決するために、リチャードは「トレーディングカード」のビジネスモデルに目をつけた。

 トレーディングカードというのは、日本で言えば、食玩についてくるキャラクターシールや、アニメ産業、アイドル産業などに付随する賞品を想像していただければ結構である。つまり、それ単体では”ゲーム”をすることはできないカード型の商品である。

 トレーディングカードは通常、シリーズ物として新商品が長期的に販売される。それによって、継続的な収益を得ることが可能だった。換言するならば、この「拡張性」こそ、トレーディングカード最大の長所なのである。

 あるトレーディングカードのタイトルがロング・ヒットすると、そのシリーズには「資産価値」が生まれる。例えば、そのシリーズのレア・カードを、あなたがネットオークションに出品したとしよう。そうしたなら、元値以上の価値がつくだろう。これがブランドである。こうしたブランド力の醸成も長期的収益に結びつくものとして、TCGのモデルには考慮されている。

 しかしながら、トレーディングカードの購入を促す理由付けはあくまでも「コレクション」にすぎないのを忘れてはならない。単に「コレクション」というだけでは、次第に購入意欲は薄れていってしまう。そこで、トレーディングカードに”ゲーム”のシステムを導入する、というわけだ。そうすることで、「相手に勝利する」という新たな理由付けが生まれ、強烈なインセンティブ・システムとなることはお分かりいただけるだろう。

 このようにして、「独自の世界観」「ロールプレイング」「手軽さ」「拡張性」をあわせ持つ元祖TCG、マジックが誕生する。当初はボードゲームユーザー向けに販売されていたが、初版が瞬く間に売れてしまい、急遽増刷するということもあった。その後も売上を急拡大させていき、ついには日本に上陸することとなる。


III. なぜ、子供たちが買うのか

 日本では、MTGの日本語版発売をきっかけとして、様々な国産のTCGが発売されるようになった。国産TCGは、日本独特のユニークさを持つものが多い。それらは、日本で人気のあるアニメーションや、漫画、テレビゲームなどのキャラクターを用いて作られていた。加えて、煩雑なカード・テキストや難解なルールを簡略化することで、より若い層へと市場を拡大することに成功した。

 こうした国産TCGは日本のTCG市場を急成長させ、いつしか「キャラクター系TCG」と呼ばれるようになっていった。今日では、国内のTCG市場規模は約800億円にものぼるといわれており、玩具の中ではテレビゲームに次ぐ市場規模になっている(日本玩具協会調べ、2009年)。


IV. なぜ、大人たちが買うのか

 ここで、I章のシーンを思い出して欲しい。基本的に日本では子どもが購入するTCGであるが、なぜ大人も買っていたのか?ここでは、その理由を考えてみよう。それには、大人がどんな種類のTCGを買っているのか、ということを考慮しなくてはならない。彼らが購入しているTCGの多くは、アメリカ産、もしくはそれに似た国産TCGであることが多い。これはどういうことを意味するのであろうか。

 こうしたTCGは、「高度な知的ゲーム」としての側面が非常に強い。第一に、TCGはカードゲームが発祥であり、そのゲーム構造はシンプルに見えて非常に戦略的である。つまり、あなたがTCGをプレイしているとき、あなたは、確率的な要素を考慮しつつ最善の行動を取らない限り負けてしまうのである。

 第二に、TCGの特徴である「拡張性」は、カードゲームの環境に一定間隔で変化をもたらす。これにより、既存の戦略というものに固執することが不可能になり、新たな戦略を考える必要性に迫られることが、「新鮮さ」を生み出し続けるのである。

 第三に、戦略的な側面の他に、大会を運営するための競技団体やその組織構造、またスポーツと同じような、多額の賞金を奪い合うプロ制度などの「地盤」がしっかりしている点も挙げられる。

 こうした特徴を持つ、大人たちが購入するTCGは「競技系TCG」とも呼ばれている。大人たちは、TCGについて「戦略的な魅力」を第一に考えている、というわけだ。今でこそキャラクターが先行しがちなTCGではあるものの、戦略的側面をないがしろにしたTCGは、やはり大人は買わないのだ。


V. 問題は何か

 今日、TCGの市場はとても大きく、玩具のジャンルとして確固たる地位を築き、多大なる商業的成功を収めている、ということは理解できたであろう。しかしながら現在、私はTCG市場には大きな問題があるものと考えている。
 その問題の一つが「売り逃げ商法」だ。これは日本国内でしばしば見られる売り方である。それに使われるのは、日本の「キャラ系TCG」である。

 キャラ系TCGはその名の通り、日本で人気のあるアニメーションや、漫画、テレビゲームなどのキャラクターを用いて作られている。これをよく考えてみると、もし、素材となったアニメ・漫画作品の人気が下降線をたどるようになったとき、その作品を利用したTCGの売上はどうなるのだろうか。キャラ系TCGは、素材となる作品の人気が出た後に販売されるのが普通であり、必然的に「後追い」の商売になる。つまり、売上も作品の人気に追随していくことになる。したがって、作品人気が下降し始める頃にはTCGは撤退してしまうのである。

 元来、ブランドイメージとは長い期間を経て醸しだされるものだ。しかし「キャラ系TCG」はこのプロセスをスキップしてしまった。その結果が、「売り逃げ」―素材となる作品の人気が高いうちに売り、人気が下落するとすぐに撤退する―という商業スタイルを招いてしまったのである。売り逃げ商法においては、商品のクオリティを考慮する必要性が薄い。つまり、”ゲーム”としてお粗末な作りの商品が市場に横行するというのが売り逃げ商法の帰結だ。

 売り逃げ商法の犠牲者は日本の子供たちである。こういったTCGは性質上、長期的ヒットを狙っていないことが多く、短期的な利益を目的として子供たちを購入へ駆り立てるような仕掛けがなされている。日本の子供たちは搾取されていると言っても過言ではない。日本の大人たちは、この搾取から子供たちを守らなければならない。

 では対照的に、「競技系TCG」に問題は存在しないのか?と問われれば、ノーと答えざるをえないのである。最大の問題として、競技系TCGは、「新規参入者を獲得しづらい」という欠点を抱えているからである。この欠点の源泉は何であろうか。様々な理由が考えられるだろうが、その共通項は、競技系TCGの特徴が良い方向に働かず、逆に悪い方向に働いている、というものである。これを踏まえた上で、以下の源泉が挙げられる。

 第一の源泉は、前述の、競技系TCGは「高度な知的ゲーム」としての側面が非常に強いという点である。このことは裏返しとして、ルールが難解、実力を向上させるために多くの時間を要する、といったイメージと結びつきやすい。

 第二に、競技系TCGは「チープさ」という点でキャラクター性が比較的弱い。「独自の世界観」はTCGにとって不可欠だ。しかしながら、それが熟成「されすぎ」て、深すぎる世界観を持つようになると、新規参入者が気兼ねなく買うことをためらわせる一因ともなるのである。

 これらのことから、新規参入者の購入意欲が消失しがちなのである。事実、競技系TCG全体としての売上は減少傾向にある。
 
 現在のTCG市場は巨大だ。だが、既存のTCGの商業戦略には閉塞感がつきまとう。この問題は、持続可能なTCG業界を目指す上では解決されなければならないだろう。それはとても難しく、禅問答ほどに気が遠くなるが、それを目指していくことは今後必要になってくるはずだ。


参考:

The Japan Toy Association
http://www.toys.or.jp/ Retrieved 25 July, 2010
Wizards of the Coast, Inc.
http://www.wizards.com/ Retrieved 25 July, 2010
KONAMI CORPORATION
http://www.konami.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
MEDIA FACTORY, INC.
http://www.mediafactory.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
Carddas.Com
http://www.carddas.com/ Retrieved 25 July, 2010
ASCII MEDIA WORKS Inc.
http://asciimw.jp/ Retrieved 25 July, 2010
SEGA Corporation
http://sega.jp/ Retrieved 25 July, 2010
BANDAI Co., Ltd.
http://www.bandai.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
Bushiroad Corporation
http://bushiroad.com/ Retrieved 25 July, 2010
TOMY COMPANY, LTD.
http://www.takaratomy.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
Broccoli Co., Ltd.
http://www.broccoli.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
NTT Publishing Co., Ltd.
http://www.nttpub.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
Kadokawa Shoten Publishing Co., Ltd.
http://www.kadokawa.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
Fujimi Shobo Publishing
http://www.fujimishobo.co.jp/top.php Retrieved 25 July, 2010
Square Enix Company, Ltd
http://www.square-enix.com/jpn/index.html Retrieved 25 July, 2010
EPOCH.CO.,LTD.
http://epoch.jp/ Retrieved 25 July, 2010
Tecmo, Ltd.
http://www.tecmo.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
ENTERBRAIN, INC.
http://www.enterbrain.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010
POPLAR PUBLISHING CO., LTD.
http://www.poplar.co.jp/ Retrieved 25 July, 2010

 
関連記事
スポンサーサイト



| ノンジャンル考察(?)系 | 01:15 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

え、えいごりょく…英語力ががちすぎるよぅ((^(^(^(^(^o^)^)^)^)^))ヒュンヒュン

ざいたくせんぱいすごいてむ(*´ω`*)

| へろー | 2010/10/24 01:39 | URL |

u do a nice work! :)

| AC | 2010/10/24 02:25 | URL |

HAHAHA!
It's a very funny theme!





本文が英数字のみの場合は書き込めないだと・・・

| CHAKE in L.A. | 2010/10/24 09:52 | URL | ≫ EDIT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://apg.blog3.fc2.com/tb.php/347-0123e983

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT