【総計】 「まおゆう」「ゲート」の感想 【軽く4,000P超え】
・リアルタイムで追っかけていた作品ではないため、各巻ごとの具体的で詳細なレビューではありません。
・独断と偏見
・要素毎に「○○っぽい」と書くことはありますが、「=パクリだと言っている」という解釈はしないように
1.まおゆう魔王勇者
「勇者が魔王を倒す=ハッピーエンド にはならないよね?」という
王道への疑問を題材にしたファンタジー小説。本作ではそれを主に経済的な視点から指摘し、
(例えば前線と後方支援の分業商業体制、食料生産力と人口など)
通常のファンタジー小説やゲームでは除外されている部分を主題にしている。
このような経済や商業をからめた話としては、最近だと「火の国風の国物語」があった。
しかし、そちらはあくまで軍略として、戦闘のアクセントとして取り入れられているだけであり、
あくまでメインは武力である。
一方「まおゆう」では、基本的に防衛戦しかやっておらず、その防衛戦でも
消費物資などの経済的な視点が中心、他には陣地の発展などに視点が置かれている。
あくまで文化発展が中心であり、戦闘はキャラ描写や感情の発露の場にすぎないとすらいえる。
ストーリーの内容は、異なる民族や文化レベルの人々が交流し、様々な問題や軋轢を乗り越えつつ
世界平和を目指す話である。基本的に文明は中世ファンタジーレベルであるが、
魔王は近現代レベルの知識を有しており、それを駆使して世の中を変えるべく動いていく。
(スターオーシャンだったら未開惑星保護条約に引っかかるレベル。実際、火薬の伝達で途中から戦争が激変してしまった)
馬鈴薯、羅針盤、といったモノや天然痘を防ぐ種痘、物ではなく情報・概念の売り込みといった
事柄が様々なところに影響を与え、文明発展のダイジェストを見ているような気分になることができるはずである。
(ゲーム化するならcivみたいにすると調度良いだろう)
伏線の回収の小気味よさも合いまり、読みだすとなかなか止まらない。
規模が世界規模であるため群像劇的な面が強く、次々に登場したキャラクターが成長し、
それぞれの役割を全うしていく流れは読んでいて飽きにくい。
本作の文章的な特徴としては、地の文が殆ど無いことが挙げられる。言うなれば台本のような感じで、
人物「(セリフ)。」 (効果音)
といった文体で進んでいく。もちろん、経済学の話も駆け引きの説明でさえも会話として扱われる。
元々が掲示板の作品であり表現が洗練されていないことも相まって、割と読みにくい。
効果音などもそのまま書かれているため、戦闘シーンの描写などは状況を掴みにくい。
話を追うのなら、コンプエース、ファミ通コミッククリア、チャンピオンREDで漫画化されているので
そちらを参照するのも手。コンプエースかファミ通版で絵が気に入ったほうでいいだろう。
なお、ニコニコ静画にて、七積ろんちさんがいち早く(ファンとして)漫画化していたりする。
人気を博したこともあってか、後に公式ゆるゆる4コマ漫画「向いてませんよ、魔王様」を任されている。
ちなみに、「まおゆう」はアニメ化が決定している作品でもあったりする。
ところが、この作品は説明文が多く、動画として映えるか疑問を覚える。
加えて、登場人物が全員名無し・役職表記のみであるため、音声化したら前代未聞な聴き応えになるのではないだろうか。
・・・ほんとにアニメ化しちゃっていいの?コレ。
2.ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
現代日本の首都・東京。ある日突然、銀座に不思議なゲートが出現し、
中からまるでファンタジー世界の住人のような軍勢が現れ、多数の民間人が犠牲になるという「銀座事件」が発生。
斯くして野蛮な敵対勢力を力づくでも交渉のテーブルにつかせ、国境の確定や損害賠償の請求をするために
自衛隊が派遣されることになった、というエンタメ色の強いファンタジーライトノベルである。
自衛隊とゲート先のあれこれ、新大陸どころか新世界への足がかりを持つ日本と周辺国との政治的軋轢、
自衛隊叩きに余念のない国会やマスメディアなどといった政治ネタ・社会風刺もあり、
改訂して毒を弱めた弱毒版と呼ばれるバージョンを元に書籍化された。
(といってもまだ結構イデオロギー色が強いため、最初に立ち読みしたほうが安全だろう)
最初はアルカディアで連載され、後にアルファポリスによって書籍化されている。
(アルファポリスはよくネット小説の配信・書籍化を行なっており、有名な作品としてはレインなどが挙げられる)
自衛隊VS近代以前の軍事勢力というと「戦国自衛隊」が有名である。
こちらは補給もままならず、大量の物資を消費する現代兵器の弱点から全滅する話であったが、
今作はタイムスリップではなく、世界が安定してつながっている状態であり、
物資輸送も(ゲート幅という制約はあれど)ガンガン行えるという点が大きく異なる。
つまり、小銃が、擲弾が、自走砲が、対地攻撃ヘリが、航空機が、情け容赦なく火を噴く。
そんな圧倒的な軍事的優位の中、あくまで自衛隊として振る舞い、
現地住民との信頼を培っていくのが本作の魅力の一つといえる。
(助けた相手に感謝されただけで涙したり、航空規制のない空を飛んでパイロットが浮かれたりと地味に生々しい)
自衛隊が美化されてるマンセー小説とも言われるが、
ラノベに出る悪役じゃない自衛隊及び公務員は大体そんな感じなので素直に楽しもう。
戦闘描写については前述のとおり格差がありすぎるため、対策が進んだ終盤までは正面衝突するとほぼ一方的である。
命令や理念に縛られる、VS物量、VS近接白兵戦、VSゲリラ戦法、VS暗殺部隊など限定的な状況から危機に陥る程度で、
まともに相手にして手こずったのは一部の大型モンスターや、最強格の古代竜の一匹である炎龍相手くらいである。
(恐らくロードスのシューティングスターのオマージュだろうが、逆算するとパーン達の強さがエライことに)
そのため、基本的には十全に動ける自衛隊が活躍するという痛快さが魅力と言える。
キャラクター面では、ラノベによくあるように主人公が準ハーレム状態になるが、
元々の描写がなまけ者で、それに関するネタも事欠かないためあまり違和感がない。
(一応好意を寄せられている自覚はある)
【主人公のダメっぽい所一例】
・オタクでバツイチな33歳。イベントを理由に有給とる
・楽な進学と楽な就職を選んだ結果、自衛官の道へ進む
・銀座事件に巻き込まれた時の反応「このままでは夏コミが中止になる!」 ※そういう日時に事件は起きた
・嫌なことから逃げることだけは随一。
(フォックスハンティング訓練のターゲットにしようという話が出た時点でいなくなり、特殊作戦群ですら手を焼くほど)
・一応レンジャー資格持ち、特殊作戦群を経ている ※但し「真面目になったら実は強い」的な意味では断じてない
他に、群像劇とまではいかないが、様々な人物が現地で人間関係を育むため、
そちらもそれぞれの結末がどうなるのか、決着がつくまで楽しむことができる。
(最後が駆け足気味だったため、むしろ決着がついてからのその後が気になるという人も多い)
元々ネット作品であることも手伝ってか、ネット受けのよさそうな
笑いの小ネタが豊富であることもページを進める原動力となるだろう。
(反面、ネット作品に多い、軽く砕けた文章も多いため、そこが気になってしまうこともあるかもしれない)
現在は竿尾悟氏によって漫画化されており、アルファポリスで公開及び単行本化されている。
原作では挿絵がなく、表紙のキャラ(主に主人公及びヒロインズ)しか容姿がわからなかったため、
その他のメインキャラがどのような姿か描かれるのはこれが初めてとなる。
両作とも面白いが、
何も考えず読めてスカッとするのはゲート、
頭の体操がてら読めて面白いのはまおゆう
というのが率直な感想で、キャラクターの魅力や描写量などから
漫画が気になるのはゲートの方といったところ。
ただ、両作とも長い(まおゆう1,700P超、ゲート2,500P超)ので、
どっちも完結できるかを心配するほうが先かもしれない。
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