群馬大学GA研究会 なんでもにっき

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三菱重工資料に見る国産ロケットの今後

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Presented by CHAKE...

※液体燃料ロケットだけに話を絞ります











三菱重工が事業説明会向けに発表した資料があります。
今回はこれについてちょっと触れてみます。

航空宇宙事業本部 事業説明会 (PDFファイル) -三菱重工業株式会社

※宇宙分野以外にも、防衛や航空機の事についても書かれてるので面白いですよ ↑



三菱重工は以前から日本のロケット製造を担ってきましたが、
2007(平成19)年からは、H-IIAロケットの打ち上げ関連業務及び商業打ち上げの受注活動も同社が行う事に。

そのため三菱重工は、如何に 『ビジネス』 としての宇宙開発を行えるか模索を続けています。



今後のH-IIA/H-IIBの打ち上げ予定は以下の通り。

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実際にはこれに加えて今年度中にH-IIAがもう1機、
情報収集衛星レーダ4号機
情報収集衛星光学5号機実証衛星
上記2基の、政府の情報収集衛星(IGS)打ち上げに用いられると思われます。

また来年度以降においても、H-IIAでX線天文衛星(ASTRO-H)の打ち上げが予定されています。


しかしこれらの打ち上げは全て官需で、ロケット打ち上げビジネスの要である民需はほぼ皆無なのが現状です。





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「2011 Commercial Space Transportation Forecasts」という商業衛星の需要を予測したレポートによると、
今後はアジアやアフリカ、南米といった各新興国の衛星利用ニーズが増加すると共に、衛星自体が大型化

静止トランスファ軌道(GTO)に4t以上の衛星が半数以上を占めるようになると思われ、
現状のH-IIAの能力ではかなり見劣りする状況となりつつあります。










そこで三菱重工は、以下に挙げる3パターンの方法で日本の宇宙ビジネスの競争力強化を図る構えです。



H-IIAの高度化による国際競争力向上

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いわゆる第2段機体の「高度化」を行う事で、
長秒時慣性航行機能の獲得
ペイロード搭載環境の向上
飛行安全システム追尾系の高度化
といったH-IIAの性能向上を図る計画です。

開発は既に昨年度から行われており、先月打ち上げられた21号機でも各種試験が行われました。
詳細はJAXAの資料をどうぞ → http://www.jaxa.jp/pr/brochure/pdf/01/rocket08.pdf


これにより、太陽同期軌道では異なる高度への2基の衛星の投入が可能となるほか、
衛星1基あたりの打ち上げ費用を現在に比べ3割~4割低減させる事が可能となります。

また通信衛星等の静止衛星では、衛星本体の軌道変更用燃料の使用を少なく出来るため、
従来より衛星の寿命を3~5年延命させる事が可能となります。


この高度化第2段を搭載したH-IIAの打ち上げは来年度からが予定されています。






H-IIBの三菱側への移管によるラインナップ拡充

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現在H-IIBは事実上HTV「こうのとり」打ち上げ専用機という状態ですが、
性能的には静止トランスファ軌道(GTO)への投入能力は8tと、静止衛星2基同時打ち上げが十分可能な性能を持っています。

そこでH-IIBがH-IIA同様に三菱重工へ打ち上げ関連業務等が移管されれば、
商業衛星打ち上げにおいて、海外への強力なアピール要素となるのです。


実際、来月の3号機が打ち上げに成功した暁には三菱側への移管が行われる模様です。






次期基幹ロケット開発で打上げ能力 ・ コスト競争力強化

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以前にもお伝えした「H-IIIロケット(仮称)」の開発計画。
参考 : http://apg.blog3.fc2.com/blog-entry-1569.html

上の画像は三菱重工が検討しているH-IIIの計画構想で、
見た所アメリカ ・ ボーイング社のDelta IVロケットに似ているように思えます。

恐らく左からタイプ別に、
●機体直径4m ・ 第1段メインエンジンはLE-X2基
●機体直径5m ・ 第1段メインエンジンはLE-X3基 ・ 有人用にも使用可能
●機体直径5m ・ 第1段メインエンジンはLE-X3基 ・ SRB(固体ロケットブースタ)使用
●機体直径5m ・ 第1段メインエンジンはLE-X3基 ・ 同仕様のLRB(CBC?)を両側に装着

一番右の機体は恐らく世界トップクラスの打ち上げ能力を持つに至るはずです。
形態的には似たようなロケットに、Delta IV HeavyやFalcon 9 Heavyがあります。


昨年度から基礎研究は始まっており、2018年~2022年度中の試験機打ち上げが目標とされています。





















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国産ロケットの前途は多難ですが、世界に誇れる宇宙開発を今後も推進していって頂きたい所です。
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