空想と現実の “DDH-182”
「DDH」とは海上自衛隊が有する「ヘリコプター搭載護衛艦 : Helicopter Destroyer」の事。
主に対潜任務のために対潜ヘリを何機か搭載 ・ 運用し、所謂「新 ・ 八八艦隊」において中核的役割を担う護衛艦です。

かつてのDDHと言えばこの「はるな型」(退役済)や、

この「しらね型」のように、
艦中央部に構造物を集め、前部に武装 ・ 後部にヘリ甲板という容姿でした。
どちらも基準排水量は5,000t前後で、後年に「こんごう型」が登場するまでは海自最大の護衛艦でした。
また大型ヘリを数機同時に運用するというスタイルは世界でも他に例を見ず、極めて特異な存在であると言えます。
73式5インチ砲を重ねるように2門装備するその姿は、旧海軍艦艇ファンからも人気を博したものです。

時は流れて2012年現在。
海自のDDHは新時代へと突入し、先述の「はるな型」の後継艦として「ひゅうが型」が登場。
同時発着艦を可能とする空母スタイルの全通甲板に、基準排水量13,950tと自衛艦最大規模の船体を持ち、
新開発のC4Iシステムを装備する事で対潜能力は勿論、対空能力も従来型DDHに比べ飛躍的に向上しました。
現在これを上回る通称「22DDH(19,500t型護衛艦)」が建造中ですが、それは一先ず置いておいて・・・・・・
この「ひゅうが型」の2番艦として、 護衛艦 『いせ』 (DDH-182) が存在します。

艦名である 『いせ』 とは律令国時代の「伊勢国」に因んだ物で、
旧海軍時代の戦艦 『伊勢』 から数えれば二代目という事になります。
ちなみに、戦艦 『伊勢』 は伊勢型戦艦の1番艦で、姉妹艦である2番艦が 『日向』 でした。
この両艦は太平洋戦争中期の深刻な空母不足から「航空戦艦」へと改装された事でも有名。
それを考慮すれば、現在の「ひゅうが型」の艦名は強ちまんざらでもない事がお分かり頂けるでしょう。
さて、話を護衛艦 『いせ』 に戻しますが、実は全く同じ「DDH-182」を名乗る護衛艦が存在する事をご存じですか?
勿論それは現実に同番号の艦が存在するという事ではありませんw
あくまで “架空の艦” ではあります。
それこそ、「ジパング」に登場した 護衛艦 『みらい』 。
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西暦200X年の現代日本から、1942年のミッドウェー海戦の海域へとタイムスリップしてしまった数奇な艦。
ヘリコプター搭載護衛艦である「ゆきなみ型」の3番艦という設定で、
「こんごう型」 ・ 「あたご型」 ・ 「むらさめ/たかなみ型」を足して割ったようなフォルムとなっています。
ネームシップである 『ゆきなみ』 が「DDH-180」。
次いで2番艦である 『あすか』 が「DDH-181」。
そして3番艦である 『みらい』 が「DDH-182」なのです。
しかし「ひゅうが型」と比べると、 『みらい』 がDDHを名乗るのはいささか無理があるような気がします。
と言うか「ひゅうが型」以前に「はるな型」や「しらね型」よりもDDHとしての特性に欠けるのは明らかです。
『みらい』 の搭載ヘリは、SH-60J×1とMV/SA-32J 『海鳥』 ×1の計2機。
もうこの時点で他の各DDHより見劣りする訳ですが、
更に追い打ちをかけるように、この艦型では複数機の同時発着艦も不可能という有様。

一番艦様が近いと思われる「あたご型」の艦種が「DDG(ミサイル護衛艦 : Destroyers, Guide missile)」である事からも、
『みらい』 がDDHであるのはかなり苦しいという事がお分かり頂けるかと。
まぁあくまで設定ですから、あまりここに目くじら立ててケチつけるのもどうかと思うんですけどw
でまぁ、これだけだとただ単に艦番号が同じだねで終わってしまうんですが、
それ以外にも 『いせ』 と 『みらい』 には数奇な巡り合わせがあったりしまして・・・・・・
① 『いせ』 は当初「DDH-182」ではなく「DDH-146」になるはずだった
これは順番を考えればすぐに判ります。
前々型である「はるな型」は、 『はるな』 が「DDH-141」、 『ひえい』 が「DDH-142」。
前型である「しらね型」は、 『しらね』 が「DDH-143」、 『くらま』 が「DDH-144」。
そう、「ひゅうが型」はこれらの後継艦な訳ですから艦番号も連続するのが普通です。
事実当初こそ、 『ひゅうが』 は「DDH-145 (2405号建造艦)」、 『いせ』 は「DDH-146 (2406号建造艦)」とされていました。
ところがどういう訳か完成した頃には、
『ひゅうが』 は「DDH-181 (2319号建造艦)」に、 『いせ』 は「DDH-182 (2320号建造艦)」にとそれぞれ変更されました。
どういう経緯があったのかは明らかとはなっていませんが、何となく 『みらい』 との因縁を感じてしまいます・・・w
※必ずしも艦番号は連続して付与される物ではなく、飛ぶ事もまれにあったりします
②漫画で 『みらい』 が撃沈された翌日に 『いせ』 が進水
『みらい』 は2009年8月20日(木)に発売されたモーニング誌上に掲載された「航跡412 航海の彼方」にて沈没。
現代艦艇のモロさを印象付けるように、僅か1発の砲弾で撃沈されました(泣
ところが何とその翌日、2009年8月21日(金)に 『いせ』 が進水。
漫画においてもその後の最終話で、生まれ変わった新 『みらい』 が登場していましたが、
現実世界においても、まるで図ったかのような完璧なタイミングで 『いせ』 が登場していた訳です。
ね? こう書くと関係ありそうな気がしてくるでしょ?(無いけどw)
最後に、両艦の諸性能を比較してこの記事を畳む事にしましょう。
DDH-182 みらい | DDH-182 いせ | |
【排水量】 | 基準排水量 : 7,735t 満載排水量 : 9,998t | 基準排水量 : 13,950t 満載排水量 : 19,000t |
【全長】 | 171m | 197m |
【全幅】 | 21m | 33m |
【吃水】 | 6.3m | 7m |
【機関】 | GE製LM2500ガスタービン 4基2軸推進 COGAG方式 120,000PS | GE製LM2500ガスタービン 4基2軸推進 COGAG方式 100,000PS |
【最大速力】 | 30kt超 (35kt?) | 30kt |
【乗員】 | 241名 | 約340~360名 |
【各種兵装】 | ●OTOメララ 54口径127mm単装速射砲×1 ●高性能20mm多銃身機関砲(CIWS)×2 ●HOS-302 3連装短魚雷発射管×2 ●RGM-84 ハープーンSSM4連装発射筒×2 ●Mk.41 VLS 29セル ●Mk.48 VLS 48セル | ●高性能20mm多銃身機関砲(CIWS)×2 ●12.7mm単装機関銃×7 ●HOS-303 3連装短魚雷発射管×2 ●Mk.41 VLS 16セル |
【各種電子装置】 | ●イージスシステム ●AN/SPY-1D×4 (多機能レーダー) ●OPS-28×1 (対水上レーダー) ●FCS-2 2型22A×1、SPG-62×3 (射撃管制装置) ●OQS-4×1、OQS-21×1、SRQ-19×1 (ソナー) ●NOLQ-2 (統合電子戦システム) ●Mk.36 SRBOC×4 (チャフ ・ フレア発射機) | ●OYQ-10 (戦術情報処理装置) ●FCS-3×8 (多機能レーダー) ●OPS-20C (対水上レーダー) ●FCS-3 (射撃管制装置) ●OQS-21 (統合ソナーシステム) ●NOLQ-3C (統合電子戦システム) ●Mk.36 SRBOC×4 (チャフ ・ フレア発射機) |
【艦載機】 | ●SH-60J×1 ●MV/SA-32J×1 | ●SH-60K×3 ●MCH-101×1 ※最大11機の積載可能 |
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●)
. | (__人__)____
| ` ⌒/ \
. | /( ○) (○)\ <やっぱり「ひゅうが型」ってただの空b・・・・・・ウグッ
. ヽ / ⌒(n_人__)⌒ \
ヽ |、 ( ヨ |
/ `ー─- 厂 /
| 、 _ __,,/, \
| /  ̄ i;;三三ラ´ .| ドスッ
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